飴玉


並んで登校する並木道、大地が、ん、んん、とすっきりしない咳払いを繰り返している。
「…風邪か?」
「いや。なんだか喉がすっきりしなくて。…風邪じゃないと思うんだけど」
「……」
それを聞いて少し考えた律は、おもむろにかばんを探った。
「…大地。これ」
差し出された小さな飴をまじまじと見つめる。
「…これ?」
「もらったんだ。…のど飴じゃないんだが、何かの足しにはなるだろう?」
…大地はじんわり笑った。
「ありがとう、遠慮なく。…でも、律からもらったものだと思うと、もったいなくてなめ
られないな」
聞こえないようにこっそりつぶやいた言葉は、音だけが律の耳に届いたようだ。
「…?…何か言ったか?」
「いや、別に」
大地はごまかして、少し足を速めた。
強い日差しが照り返す。今日も朝から暑くなりそうだ。