絡める いつもは静かな界隈に賑やかな音が響いている。おや、とのぞきこんで、大地は顔をほこ ろばせた。 「…お祭りだ」 「…こんなところに神社があったんだな」 律も、いつも冷静な瞳を少しゆるめる。 「こぢんまりしているから気付かなかった」 「そうだね。ハルのところに比べると小さいかな」 大地が何気なくつぶやいた言葉に、律がふっと笑った。 「…何?」 「いや。…去年の夏祭りを思い出した。……ああいうところで」 と、社務所の入口に設けられたお守りの授け所を指し、 「小日向と大地が並んで座っていて、…響也が気にして気にして」 「ははは」 大地も笑う。 「ひなちゃんの巫女さん姿、似合っててかわいかったもんなあ。人気者だったよ」 「…俺も内心、穏やかじゃなかった」 「あれ。そうだった?……大丈夫、俺がいるのにひなちゃんに変な虫を近づけさせたりし ないって」 「ちがう、そうじゃなくて、…お前と小日向が並んで座っているのが似合っていて、…」 ふっと律は言葉を切り、 「……いや。…何でもない」 首を振った。 「……」 大地が瞳をかすかにすがめながら、ゆっくり、……ゆっくりと、首をかしげる。律はその 仕草から目をそらし、背を向けた。 「行こうか」 短く鋭くつぶやいて、足早に歩き出すその背中に、大地は静かな、けれどよく響く声でこ う問うた。 「…妬けた?」 びくりと律の肩が震える。大地は一歩で追いついて、律と肩が触れ合う位置に立ち、互い の身体で隠すようにしながら、律の左手に自分の右手をそっと触れさせ指を絡めた。 「…大丈夫だよ」 笑みを含んで、慈しみを含んで、愛しげに歌うように大地はつぶやく。 「試すような言い方をして、ごめん」 ぎゅ、と握りしめてくる指の力が、痛いのかうれしいのかよくわからない。…それでもじ わじわと寄せてくる何かに突き動かされるように、律もそっと、指に力をこめて返した。