コンビニ

風早はコンビニが好きだ。正確には、コンビニに売っているあやしい新商品が好きだ。
「スーパーにはあまり並ばないんですよねえ。どうしてかなあ」
そりゃ、あやしい商品だからだろ、と那岐は思う。
この間買ってきたのは杏仁豆腐シェイクとかいう缶ジュースで、缶の中に入った杏仁豆腐
を缶ごとがんがんふって、すすりのむ、とかいう代物だった。一口味見をした千尋は、「ゼ
リーならこういうのもいいけど、杏仁豆腐は杏仁豆腐のまま食べた方がおいしい…」と、
微妙な顔をしていた。
とはいえ、それはまだまともな代物だった。…今日風早が買ってきたものに比べれば。
「…風早。…なに、それ」
「激辛からし明太子ラムネです」
にこにこしながら風早は言った。
「買ってくんなそんなものー!!」
那岐が絶叫する。
隣で忍人が厭そうな顔をして、
「俺は飲まない」
と言った。
彼は甘いものが苦手だ。そのため、以前風早は彼に激辛カレーラムネを勧めた。それが忍
人曰く、
「辛いのに結局味は甘い」
というどっちつかずな代物だったそうで、一応我慢して飲んだ忍人は、飲み終わって二度
と飲まない、と宣言したのだ。
「ええーっ。忍人が喜ぶと思って買ってきたのに」
風早が叫ぶ。
「てか、あんたさ。自分が買ってきたものは自分で責任持って消費しなよ」
げんなり、という顔をして那岐が言うと、
「消費しますよ。でもみんなも試したらおもしろいかと思って。那岐、どうです?」
「僕も要らない」
那岐は即答する。
「私もいい…」
千尋もこわごわと宣言した。風早はにっこり笑う。
「千尋には勧めませんよ、こんな変なもの」
………。
「「変なものとわかっているなら買ってくるなー!!」」
葦原家に、珍しくも那岐と忍人の二重唱が響き渡った。