●流星群● 流星群が降るはずの空は、期待に反していつもと変わらず静かだった。 見つからない流れ星に飽きて傍らを見やると、蓬生はベランダにもたれてじっと夜空に目 を凝らしている。 …その横から見た瞳のまろい線が美しくて、ふと、胸がはやった。 「…土岐」 たまらず名を呼ぶと、振り返った蓬生は何を察したのか、俺を許すように無言で微笑んだ。 夜空に背を向け、蓬生を抱きしめ、吐息を貪るように口づける。蓬生は目をまろく見開い たままそれを受けていたが、 「…」 ふ、と。…俺の胸を叩いた。 「…?」 訝る俺に、ただ一言。 「…流れ星」 彼には見えたのだろうか。振り返った俺の目にはもう、星は見えなかった。