●孤高の灯台● 真昼の砂浜に、色とりどりのパラソルの花が咲く。その様子を、堤防の上に腰をかけて、 蓬生はぼんやりと見下ろしている。 ふいに、視界に影が差した。 「…そこに立たれるとうっとうしいんやけど」 ぼそりとつぶやく声に、 「皆と遊ぶか、パラソルの下に入るか、どちらかにしろよ。…コンクール中に体調を崩し たくないだろう?」 大地も静かに言い返す。 「ライバルにそういうお節介、…君のキャラとちゃうやろ」 「東金の足を引っ張るような行動も君らしくないね」 …見交わす視線に、一瞬火花が散った。 「…地雷を踏んだかな」 先に薄く笑ったのは大地で、 「…一応は忠告してくれたんやろから、その礼に、今のは聞かんかったことにしといたる わ」 言い捨てて、蓬生は立ち上がる。 「…溺れん程度に、波と遊んでくる」 「どうぞ。…気をつけて」 堤防を降り、熱い砂に舌打ちしながら波打ち際を目指して、……ふと、蓬生は大地を振り 返った。 堤防の上にすっきりと立つその姿が、なぜだか孤高の灯台のように見える。 「……ばかばかしい」 自分の発想に自分で笑って、蓬生はまた波打ち際を目指した。