●期間限定●


「君、コンビニとか好きやろ」
「……?」
レジで支払いをしていた大地は、怪訝そうに蓬生を振り返った。かごには缶チューハイと
缶ビールが何本か、ポテチ。それに、店員がケースからからあげを取りだしている。
「何だい、いきなり」
レジ袋を受け取ってコンビニを出ながら大地が首をかしげると、せやかて、と言いながら
蓬生が肩をすくめた。
「新商品の缶チューハイ、地域限定ポテチ、期間限定味のからあげ」
淡々と並べ上げ、
「コンビニならではのラインナップやん」
「……」
まあ、否定はしない。大地が首を一つだけすくめて歩を進める。数歩遅れてついていきな
がら、蓬生はぽつりと、俺も、とつぶやいた。
「……?」
「俺も、そうやろ?」
「…?何言って…」
「時々会うだけの期間限定の関係やから興味あるんやろ?…消えてしまえば跡も残らんと
忘れるはずや」
「……。何か悪いものでも食べたのかい?」
「…は?」
「俺に対して下手に出るなんて、君らしくもない」
「…したてに、なんか」
「ならいいけど」
すっ、と手を伸ばして、大地は蓬生の手を捕まえた。
「俺が、本当はどれだけこの手を放したくないと思っているか、君はまだ認識していない
わけだ」
ぐ、と握り込まれる手。蓬生は目をそらした。
「なんぼ夜やからって、こんな人目のあるとこで、男同士で手をつなぐんは勘弁してほし
いんやけど」
しかし大地はいけしゃあしゃあと、
「うん、そうだろうね。だからやってる」
言ってのける。
「…榊くん」
ため息をつくと
「好きだよ」
直球が来た。
「期間限定なんかじゃない、ずっと好きだ。…君がそれを思い知るまで離さないよ。……
行こう」
「……榊く……、…大地」
「…好きだよ」
とろりととろける声が甘い。つないだ手よりも降るように与えられる睦言が恥ずかしい。
けれども胸に迫る。
蓬生は絡めた指にほんの少しだけ力を込めてみた。節のはっきりした大きな手が、そっと
包み込むように握り返してくれた。